昼間、宮崎駿の引退会見をニコニコ生放送で観ていて
どうにも気になって、そのまま映画館に行ってきました。
「風立ちぬ」
怖い話だった。
お金持ちのボンボンがのんきにヒコーキ作る話だよ☆って言ったのだれ!
超怖かったよ。
ローテンポの美しい音楽と、美しい映像。のんびりした主人公が、美しい夢の飛行機を作る物語。
に、ずっと惑わされていたかった。
すげー怖かった。
研究者の、愚直で純粋な残酷さ。世の中に対する鈍感。
キラキラした目でまっすぐに情熱を注いで作る夢の飛行機は、ゼロ戦。
あえて描かない葛藤。
ナオコの死も、なにもかも美しく描くから、余計に腹の底が冷たくなったわ。
これって、堀越次郎へのリスペクトを装った悪意の映画なのかも?って、邪推したくらい。
ラストで、夢の中でカプローニが誘ったワインはきっと血の味がするんだろう。
そんな怖いお話を、ゆったりのんびり美しく描く宮崎駿。
すごいひとだわ。
先週観た「ムカデ人間」よりも恐ろしかった。
(「ムカデ人間」も良い映画なので観るといいよ。ヘンタイ博士が人間の口と肛門をつなげてムカデ人間を作るお話。ギャグ要素の強いB級ホラーかと思ったらちがった。心理描写ちゃんとしてる。怖い。ちょっと引いた目線で人間を描いているせいで、明確な主人公がいないのもリアリティがあってよかった。ラストの絶望感ものすごい。)
ところで、引退会見で
「この世は生きるにあたいするのだ、というメッセージを子供たちに贈りたくて映画を撮ってきた」みたいなことを言ってた宮崎駿が
「とはいえ自分は、この世が本当に生きるにあたいするかどうか、本当はよくわからない」てな風なことをポロっと言っていて
いつも映画の中で生きろ生きろ言ってるのになぁ、不思議だなぁって思ったんだが。
「風立ちぬ」でも、消えていくナオコに「あなたは生きて」って言わせてて、
へぇ、と思ったっけ。
(巨大な十字架を背負った夫に、笑顔で「生きて」っていうの。怖いでしょ)
この世は生きるにあたうものじゃないかもしらんが それでも生きなさい、って、すごいメッセージだなぁ。
てなわけで、「風立ちぬ」おもしろかったです。
みんなもジブるといいよ。